ONE BY ONE short×short
あの人も参戦? 編
太陽が天高く昇り、今日もこの里を明るく包んでいる。
待機所にもその光が温かく注ぎ込んでいるが、それ以上に周りを温かくする存在が1人。
今日もまた、その1人と近づきたい男たちが、不毛な戦いを始めていた。
「そろそろ昼だなー。」
そう言って、大きな伸びをする煙草髭面上忍。
その右隣にちょこんと座った女性がそれを見上げる。
「そうだねー、お腹すいた。」
今度は銀髪覆面上忍が、首をコキコキならしながらその言葉に答える。
その人物の左隣、2人の上忍に挟まれるようにして座っている女性がそちらに視線を向けた。
「確かにおなか空きましたねー。」
そうニッコリ微笑んで女性が口を開けば、
「、ごはん一緒に食べに行かない?」
先手必勝とばかりに、女性の言葉が発せられるや否や銀髪上忍が誘う。
「カカシ、何言ってんだ。、オレとメシ行かねぇか?」
そう髭面上忍も応戦する。
と呼ばれた女性に言葉を掛けるときには1度は視線を送るものの、すぐに互いが睨みを効かせ合う。
それに挟まれている女性はただ、困った顔を浮かべるばかりであった。
「、こんな煙草吸いまくるクマと一緒に行っちゃダメだよ?」
「といるときは吸わねぇよ。
、こんな早食いと一緒に行ったら落ち着いて物食えねぇぞ?」
そう髭と銀髪が牽制しあえば、より一層、鋭い睨み合いが始まった。
間に取り残された状態の女性は、はぁ、と小さなため息をついた。
2人を眺めていても一向に終わりそうにないその牽制。
分け入る隙もなく、どうしようか考えていると、バタン、と待機所のドアが開いて締まる音が聞こえた。
「ゲンマさん!」
その姿を確認すると、まるで助けを求めるかのように女性が声を上げた。
その声に、睨み合い、牽制のし合いをしていた髭と銀髪が声を掛けられた主を確かめるように振り返った。
「ゲンマー、どうかしたの?今日、待機じゃないデショ?」
銀髪の言葉に、“そうだ”と言わんばかりに髭もその主を見据える。
ゲンマと呼ばれた、楊枝特上は少しため息を漏らした。
「別に待機じゃなくても昼ぐらいここに来てもいいんじゃないですか。任務もサボってませんし。
、一緒にメシどうだ?」
口端を上げて楊枝特上が女性に声を掛ける。
その言葉に、ただ女性は困った顔を浮かべた。
「ゲンマ、何言ってるの?は始めにオレが誘ったの!」
「カカシだけじゃねぇ。オレもを誘ってんだ。」
「そうだったんですか。でもオレも誘いましたから。」
先ほどまでの2人の睨み合いが、バージョンアップまでして再開される。
その様子をまた困った顔をして眺めていた女性は、くっと意を決した顔をして口を開いた。
「あのっ!」
その響き渡るような声に、睨みあっていた3人の視線が一気に集まる。
「あの…」
その視線にまた言い出しにくくなってしまった女性が少し弱々しく言葉を発した。
「どうかした?」
「誰と昼行くか決まったのか?」
「誰だ?」
畳み掛けるようなその言葉に、一瞬体が強張ったが、きゅっと1度口に力を入れてからそれを開いた。
「今日のお昼は予定があるんです。
その…イルカさんと待ち合わせがあって。すみません。」
そうペコリと女性が頭を下げれば、囲むようにしていた3人の顔が凍りついた。
「…どういうこと?」
恐る恐る、凍った顔をなんとか解凍して銀髪が女性に問う。
髭と楊枝も伏せかかっていた目を女性へを改めて向ける。
「今度アカデミーで授業をするので、それの打ち合わせで。」
もっともらしい、その理由に3人はほっとした表情を浮かべ、胸を撫で下ろした。
3人の視線がガラっと変わったことにほっとした女性も、胸を撫で下ろしていた。
「本当、すみません!また今度誘ってくださいね!
イルカさんがお昼買ってしまわないうちに行きたいので失礼します。」
そう言って軽く会釈をした女性は、ソファに置いてあった紙袋を片手に足早に待機所を去っていった。
3人はその女性の言葉の意味と紙袋を、その女性の残像を眺めながらポツンと佇んで考えていた。
「あれってさ…」
「あれだろ…」
「手作り弁当…」
ポロポロと口からこぼれるようにして出てきた言葉で互いが確認し合う。
意見が一致したところで、窓の外を先ほどまでここにいた女性と笑いあって歩く鼻傷中忍の姿が眼に入ってきた。
この後、3人の上忍による嫌がらせを1人の中忍が受けたのは言うまでもない。
「なんだか最近、報告書の提出が遅いですよね…
上忍の皆さんはお忙しいのでしょうか…」
拍手ありがとうございました!!
本編には出てこないイルカ先生をここに出してみました。
罪のない人ですが、悪くないのですが、なんだか恨まれ役。
それも気がつかないイルカ先生だといいです。
2006.5.2 up
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