ドリーム小説









 キミが為にこの想い







キミへの言葉は沢山頭の中を走り回って……でも、

結局見つけた言葉は並大抵の“お誕生日オメデトウ”だった。


でも此の想いは並大抵なんかじゃなーいよ。











































今日も朝日が昇ってそして沈む。
其の繰り返しの毎日がもどかしかった。

オレは急いで家に帰ると、部屋の机の上に一つ寂しく佇む
プレゼントとは呼び難い彫刻されたあるものをカカシはそっと手にとって飛躍して行った。



任務がまだ終わっていないのか、
は未だ家には居なかった。
少し待ち遠しい気持ちと、間に合ってたという安心感が入り混じる。
ミルクコーヒーのような甘苦い想いを胸に押し込めて。


オレは少しの家の周りをうろつきながら待つことにした。
時々通る彼女の庭にはいつのまにか、可愛らしい春の花が開花していて
それはいつの間にか口端が上がってしまうような
可愛らしい春の花だった。

気付かなかった小さな春の訪れに思わずしゃがみ込んで
花の中心部をまじまじと眺めてしまう。

ひとつ惜しいのは、今の時刻。
やっぱり花は太陽の元で見たいものだった。
任務の終了の意を告げられるのは決まって夕刻であり
昼下がりの時間ではない。


みたいに元気が良くって可愛いな、此の花……。


ツンと花を突いて転ばしてやろうと悪巧みを試みるが
やはり強い此の彼女に似た花はバウンドしてカカシの元に戻ってくる。


「オマエはみたいで元気だな」


他から見ると花に話し掛けるただの変な人かもしれない。
でもオレはそんなことは全く気にしない。
に嫌われるなら、話は別だが。


「遅いな……まさか」


あまり考えたくなかった。
他の奴等にもう誕生日を祝ってもらってる――…
何てことないよな。

小さな不安がオレを襲ってきた。

時間もそろそろ夜に近づいてくるのに、
オレの不安は先程から一向に変わらず、胸へと針が刺す。




「カカシ……?」


声の主など探る必要は無い。
優艶な彼女の声。
良かった、帰ってきた……。


「おかえり」


迎えの優しい本音には抱き寄せられる。
温かいカカシの胸。温かいカカシの言葉。
いつなんどきでもオレはの傍に居るよ。


「ただいま。カカシ待っててくれたの?」
「まあね」


オレの胸から顔を離すと
いつも通りの笑顔を向けてくる。
日常茶飯がオレにとっては幸せであった。
今が怖いくらいに幸せなのに、少し前までは
ほんの些細な事柄で淀んだ気持ちを抑えられえなかった自分が不甲斐無い。


「もしかして……アレだから今日来たの?」
「そ、アレだからね」


忘れてた。
すっかり自分の後ろに隠しっきりだった物を
の前に差し出した。


「写真立てだ!」


実は今日の任務先の家には老婆が一人で
其の静粛な部屋の片隅に大切そうな写真が飾ってあったんだ。
それは今は無き夫とのツーショット。
今でもこうやって大事に飾ってあるのがオレには微笑ましくて
つい質問してしまった。


《コレって旦那さんですか?》
《ああ、今はあたしを置いて先に天国へいっちまったけどねぇ。
 此の写真立ては旦那が作ったんだよ。良く出来てるだろう?》
《ああ、自家製の味が出てるよ》
《大切な人から貰ったものはどんなものでも宝物になるんだよ。
 コレは特に不器用なあの人の手作りだから余計に大事なんだ》


そう言って写真立てをオレに見せてくれた。
“大切な人から貰ったものはどんなものでも宝物になるんだよ”
というお婆さんの言葉がオレには素敵な呪文みたいに聴こえてしまった。
そんな単純な理由だけど、任務の帰り道、
手頃な木をクナイで削ってオレは不恰好な写真立てを完成させた。

もっとも、あのお婆さんが貰った様な
大層な写真立てでは無かったが……。




「何だか不恰好でゴメンね」
「ううん、凄く嬉しいよ。だって此の写真立てカカシが作ったんでしょ?」


はオレの手元を見ながら言った。
一応手甲で隠していたんだが、クナイを滑らせて慣れない作業との戦を終えたオレの手は
いつの間にやら傷だらけで、何だか情けなかった。
だから隠蔽したつもりだったのに。


には敵わないよ」
「嬉しい、此の写真立てに飾る写真撮ろう!」
「え……あ、ちょっと……!」


ぐいぐいと腕を掴まれたかと思うとはカメラを持ち出してセットする。
『カカシは此処に居てね』そう言って、セルフタイマーをかけると
オレの元に戻ってきた。


「カカシ、笑ってね」
「え……そんな急に……」




パシャッッ――!







一体どんな顔で映ってしまったのだろうか。
オレは苦笑しながら、に慶祝の言葉を囁いた。






         
 「お誕生日オメデトウ」


















そして……


未来のの部屋には

オレとの写真が

あの写真立てにおさめられて部屋に置いてある。




キミへの想いを写真に封印して何年も何年も一緒だよ。

















4月28日の私の誕生日に「時のメロディー」の水月さんより頂きました。
カカシさんの優しさに包まれるこのプレゼントを何度も読ませて頂きました。
カカシさんに愛されている感じ、手作りのプレゼント、本当素敵です!
水月さん、本当に素敵な誕生日プレゼントありがとうございました!!

氷浦 水月さんのサイト 「時のメロディー」



2006.5.15  掲載


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